東京電力グループの物流会社が2026年に公開した倉庫の構成が、この分野の現状をよく表しています。稼働しているのはアーム型のロボットと、床を走る無人搬送車(AGV)が17台。この2種類を1つのソフトウェアがまとめて動かし、ケース品の取扱量ベースで9割を自動化して、ピッキングの人員を4人から1人に減らしたと報じられています。
注目したいのは、掴む機械と運ぶ機械が、まったく別の製品として並んでいる点です。アーム側の台数は公表されていませんが、運ぶ側だけで17台が必要になっています。物を掴む機械と物を運ぶ機械は、それぞれ違う理由で現場に置かれ、必要な数も違うわけです。
いま「ロボットを入れよう」と考えたとき、選ぶ先は大きく4つあります。協働ロボット、AMR(自律走行搬送ロボット)、専用機、そして人型ロボット(ヒューマノイド)です。それぞれ得意な仕事が違い、価格の桁も、必要な準備も違います。にもかかわらず、話題になるのは決まってヒューマノイドで、比較の土俵に他の3つが乗ってきません。
本稿では4つを同じ項目で比べ、どの工程にどれを当てるかを整理します。結論を先に言えば、多くの工程では、いまでも既存の3つのほうが安くて速い。ヒューマノイドが効くのは、その3つが揃って苦手とする、限られた場所です。そこを見極めておくと、投資の失敗が減ります。
1. 4つの選択肢は、何がどう違うのか
まず、それぞれが何者なのかを短く確認しておきます。
協働ロボットは、人のそばに置ける産業用ロボットアームです。床や台に固定して使います。従来の産業用ロボットが安全柵で囲う前提だったのに対し、こちらは条件を満たせば柵なしで運用できる設計になっています。AMR(Autonomous Mobile Robot)は自律走行搬送ロボットで、人が操縦せず自分で床を走って荷物を運ぶ台車型の機械です。専用機は、ひとつの作業のために設計・製作する自動化装置を指します。部品を整列させるパーツフィーダ、検査装置、組立機などがこれにあたります。ヒューマノイドは人の形をしたロボットで、二足歩行して両腕で作業します。2026年から実際の工場・倉庫に入り始めた段階です。
── 図表1:4つの選択肢の性格 ──
| 項目 | 協働ロボット | AMR | 専用機 | ヒューマノイド |
|---|---|---|---|---|
| 得意なこと | 決まった位置での精密作業 | 決まったルートでの重量搬送 | 単一品種の高速・大量処理 | 設備と設備の間の受け渡し |
| 移動 | できない(固定設置) | できる(平坦な床のみ) | できない | できる(段差・階段も想定) |
| 掴む | できる | できない | 作業に特化して可能 | できる |
| 精度 | ±0.05mm | 停止位置±60〜85mm | 用途次第で最高水準 | 誤差5mm程度 |
| 積載・可搬 | 3〜20kg程度 | 250〜1,350kg | 用途次第 | 15〜25kg |
| 連続稼働 | 電源をつなげば無制限 | 9〜17時間 | 無制限 | 2〜5時間 |
| 品種変更 | プログラム変更で対応 | ルート変更で対応 | 装置の作り直し | 作業の学習が必要 |
| 導入費用の桁 | 1台のセルで1,000万円前後 | 1台で数百万〜1,000万円台 | 数千万〜数億円 | 価格非公表・月額契約が主 |
出典:各社公式仕様、国内システム構築事業者の公開事例(詳細は記事末尾の参考ソース)
数字の出どころは後の章で示しますが、この表だけでも使い分けの骨格は見えます。掴むなら協働ロボットかヒューマノイド、運ぶならAMR、大量に速くやるなら専用機。そしてヒューマノイドは、どの項目でも他に負けています。
ヒューマノイドが持っている強みは2つだけです。1台で複数の設備をまたげることと、建屋を改造せずに入れられること。この2つが効く場所を探すのが、選定の実質になります。
2. それぞれに、できないことがある
使い分けを考えるうえで有効なのは、それぞれの「得意」より「何ができないか」を知っておくことです。境界線はメーカーの公式仕様に書いてあります。
2-1. 協働ロボットは、その場から動けない
代表機種であるユニバーサルロボット社のUR10eの公式仕様を見ると、可搬12.5kg(機種・ソフトウェアの世代により10kgの構成もあります)、リーチ1,300mm、繰り返し位置決め精度±0.05mm、設置に必要な面積は直径190mmとあります。同じ位置に0.05mmの誤差で戻ってくる能力は、ヒューマノイドが実証している5mmの100分の1です。精密な作業では比較になりません。
一方で、リーチ1,300mmという数字が示すとおり、腕が届く範囲でしか仕事ができません。部品を持ってきたり、別の設備まで運んだりする役目は担えないので、そこは人か、AMRか、コンベアが埋めることになります。
もうひとつ、実務でよく誤解されている点を押さえておきます。協働ロボットは「柵が不要な製品」ではありません。日本の労働安全衛生規則第150条の4は、定格出力80Wを超える産業用ロボットについて、可動範囲内に人が立ち入るときは柵や囲いを設けるよう定めています。柵を省略できるのは、平成25年の通達に基づいてリスクアセスメント(危険性の調査)を実施し、危険が生じるおそれがないと評価できた場合か、ISO 10218への適合を技術ファイルと適合宣言書で示した場合です。
この考え方は2025年に発行されたISO 10218の改訂版で、より明確になりました。用語が「協働ロボット」から「協働アプリケーション」に変わったのです。理由は、安全性を決めるのはロボット単体の性能ではなく実際の使い方だから、という点にあります。ヒューマノイドを検討する際にも、そのまま効いてくる考え方になります。
2-2. AMRは、荷物を掴めない
AMRの限界を最も明快に示しているのは、オムロンの公式ページにある記述です。同社は、完全に統合されたモバイルマニピュレータを標準製品として提供していないと明記しています。
モバイルマニピュレータとは、アームを載せた搬送ロボットのことです。同社はアーム(可搬5〜25kg)と搬送ロボット(可搬60〜900kg)の両方を持っていますが、それを組み合わせた製品はカタログに存在せず、システムインテグレータが個別に組む扱いになっています。大手メーカーの標準品ですらない、というのが2026年の実情です。
日本で普及しているAMRの製品名が、この構造を象徴しています。ラピュタロボティクスの主力製品は「ピッキングアシストAMR」という名前で、ロボットは棚のあいだを走って作業者のところへ来ますが、商品を掴むのは人です。花王は2025年7月、関東の物流拠点に65台を同年冬から導入すると発表しました。1拠点への導入としては最多とされています。
走行面の制約も具体的です。MiR250の公式仕様によれば、登れる勾配は±5%まで、乗り越えられる段差は20mmまでで、50mmを超える段差は禁止。屋内専用で保護等級はIP21、床面は水・油・汚れがないことが条件です。階段は仕様上そもそも対象外になります。位置決めについても、専用のマーカーに寄せて停止する場合は±3mmですが、通常の移動では前後±60mm、左右±85mmの誤差が出ます。つまりコンベアや設備に直接荷物を受け渡すには、マーカーの設置が前提になります。
2-3. 専用機は、品種が変われば作り直しになる
専用機の強みは、パワーと速度で他を圧倒することです。ロボットシステムを手がける事業者の比較でも、専用機は画一的で単純な作業や大量の作業に向き、性能面では専用機のほうが良いことが多いと整理されています。
代償は柔軟性です。たとえば部品を整列させるパーツフィーダの場合、装置そのものは小型のボウルフィーダで5万円台から、大型のものでも130万〜270万円程度で手に入ります。ところが実際の導入では、部品の形に合わせたボウルやシュートの設計・製作、整列機構の設計、ワークテスト、設置調整が別途必要になり、ここが見積額を大きく左右します。当然、扱う部品が変われば作り直しです。
専用機については、正直に書いておくべきことがあります。設計から立ち上げまでの標準的な期間や、品種切り替えにかかる費用と時間について、公表されたデータを見つけられませんでした。工程のフロー(ヒアリング→構想→見積→設計→製造→試運転→納品)は各社が公開していますが、期間の数値は示されていません。ここは個別に見積を取るしかない領域です。
2-4. ヒューマノイドは、遅くて非力で、電池が短い
可搬は15〜25kg、手が届くのは床から1.8mまで、実証されている位置決め精度は誤差5mm、連続稼働は2〜5時間、歩く速さは秒速1.2〜1.4m。AMRの積載250kgや稼働13時間、協働ロボットの±0.05mmと比べると、どの項目でも見劣りします。それでも成立している理由は、段差を越えて設備から設備へ移動でき、建屋を改造せずに入れられるからです。
3. いくらかかるのか
比較のときに最も混乱しやすいのが費用です。本体価格を並べても意味がないという点を先に押さえておきます。
3-1. 本体価格は、総額の3割にすぎない
日本の複数のロボットシステム構築事業者が公開している内訳が、そろって同じ構造を示しています。ロボット本体は総額の約3割にすぎず、システムインテグレーション費が4〜5割を占めます。
── 図表2:工作機械への部品着脱を自動化した事例の内訳 ──
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| ロボット本体 | 300万円 |
| 架台・ハンド | 70万円 |
| 安全柵・ストッカ | 90万円 |
| システム構築費 | 520万円(設計・据付・調整) |
| 総額 | 980万円 |
出典:robot digest「ロボット導入コスト」
相場としては1台のセルで1,000万〜1,500万円、工程が複雑になれば数千万円という水準です。大型の事例では、パラレルリンクロボット10台を使った食品の箱詰めシステムで2億円という例も公開されています。
AMRについても同じことが言えます。米国の販売店が掲載しているMiR250の価格は本体64,790ドルですが、別の販売店のページには群管理ソフトが23,000ドル、充電器が13,380ドルと並んでいます。本体だけを見ると導入費を大きく見誤ります。日本で数字が確認できる数少ない例が、ラピュタロボティクスのピッキングアシストAMRで、報道によれば1台あたり月額12万円、重量検品機能を付けると月額3万円が加算されます。ヒューマノイドについては、産業用の機種はいずれも価格を公表していません。GXOやトヨタのカナダ工場の契約も月額課金で借りる形で、金額は開示されていません。
3-2. 比較対象は、その工程の人件費
投資判断の物差しになるのは、その工程にいま何人が張り付いているかです。公的統計から目安を出しておきます。
厚生労働省の毎月勤労統計調査(2025年分確報)によれば、製造業の現金給与総額は月額430,282円、うちフルタイムで働く一般労働者に限れば472,927円でした。さらに就労条件総合調査によれば、製造業では企業が負担する労働費用の総額に対して現金給与が占める割合が80.8%で、残りは社会保険料などの法定福利費や退職給付の費用にあたります。この2つを組み合わせると、製造業の労働者1人あたりの年間の企業負担は概ね600万円台半ば、パートタイムを除いたフルタイム相当で見れば700万円前後という計算になります。
ただしこれは本稿が2つの統計を掛け合わせた試算であり、公表値ではありません。両者は調査の設計が異なります。毎月勤労統計は事業所規模5人以上を対象とするのに対し、就労条件総合調査は常用労働者30人以上の企業が対象で、大企業寄りに偏ります。労働費用の調査は5年周期で、最新版も2019年度の実績にとどまっています。したがってこの数字は桁を掴むための目安であって、自社の稟議には自社の実績値を使うべきものです。
最低賃金も無視できません。2026年度の地域別最低賃金は全都道府県で答申が出そろい、全国加重平均は1,177円、前年度から56円、率にして約5.0%の引き上げになりました。目安制度が始まった1978年度以降で2番目に大きい上げ幅で、発効は2026年10月1日から12月2日にかけて順次です。人件費は今後も上がる前提で計算する必要があります。
実務的な予算の立て方として、システム構築事業者が示している考え方が分かりやすいものです。対象工程の年間人件費に償却年数を掛ける、というものです。年間人件費300万円の工程を5年で償却するなら、投資予算の目安は1,500万円になります。
3-3. 回収年数は、誰の数字を見るかで桁が変わる
── 図表3:公表されている投資回収期間 ──
| 出どころ | 内容 | 回収期間 |
|---|---|---|
| メーカー事例 | 協働ロボットメーカーが公開している導入事例 | 9か月/2か月 |
| 公的実証 | 食料品メーカーのパレタイジング自動化(2,500万円) | 5.2年 |
| 公的実証 | 油圧機器部品工場の検査工程の自動化(2,520万円) | 4.6年 |
| AMRメーカー | 「大半の顧客は12〜18か月で回収」(算出根拠は非開示) | 12〜18か月 |
公的実証の2件は、経済産業省の助成を受けた日本ロボット工業会「ロボット導入実証事業」に由来する事例。いずれも特定の1社の事例で、業界平均ではありません。
同じ「投資回収」という言葉で、10倍以上の開きがあります。メーカー事例は販促資料であり、条件のよい案件が選ばれています。社内の稟議に使うなら、公的実証の水準で計算しておくほうが安全です。AMRメーカーのページに「製造業の88%が投資対効果の不確実性を自動化の障壁と回答している」と書かれているのは、なかなか正直な記述と言えます。
なお、導入企業自身が実測値として回収期間を公表した例は、今回の調査では1件も見つけられませんでした。この空白があること自体を、検討の前提に置いておきたいところです。
4. どの工程に、どのロボットを当てるか
── 図表4:工程の性格から選択肢を選ぶ ──
| 向く選択肢 | 工程の性格 | 理由 |
|---|---|---|
| 協働ロボット | 決まった位置で、同じ動きを繰り返す。精度が要る | ±0.05mmの再現性。固定設置でよければ最も確実 |
| 専用機 | 単一品種を、大量に、速く | パワーと速度で他を圧倒する。数が出るほど1個あたりが安い |
| AMR | 決まったルートで、重い物を、長い距離 | 250〜1,350kgを9〜17時間。速度もヒューマノイドより速い |
| ピースピッキング | 混載パレットから、ばら積みの物を取り出す | 専用機として成熟。ただし後述の重量制約あり |
| ヒューマノイド | 設備と設備の間。非定型で、既存建屋を改造できない | 段差を越えて移動でき、改造が要らない |
| 自動化しない | 判断が要る。品種が毎回変わる。量が少ない | 投資が回収できない |
本稿が各社の公式仕様と公開事例をもとに整理
最後の行を入れたのは、これが実際に最も多い結論だからです。年に数回しか発生しない作業や、その都度人が判断する作業は、いまの技術水準では自動化の対象外になります。
4-1. ばら積みを掴む専用ロボットには、重さの制約がある
ばら積みの物を1個ずつ取り出す専用ロボットは、この分野では比較的成熟しています。RightHand Robotics社の製品は最大で1時間あたり1,200ピック、ピック精度99%超を公称しています。日本のMujin社のデパレタイザーは、単一荷姿で1時間1,000ピック、混載パレットでも600ピックという数字を公表しています。
ただしRightHand側の数字には「対象は2kg以下」という条件が付きます。この制約とセットで読まないと、実力を見誤ります。「ピースピッキングは1時間1,200個できる」という理解だけが独り歩きすると、現場で合いません。
5. 現場では、複数を組み合わせて使う
ここまで4つを分けて見てきましたが、実際の現場は組み合わせで動いています。むしろ単体で完結している事例のほうが少ないのが実情です。
5-1. BMWの部品供給ライン
BMWが公開している部品供給の流れが、役割分担の完成形を示しています。
未整理で到着する
部品が大型コンテナに未整理の状態で届きます。ここが工程の入口です。
ヒューマノイドが仕分ける
コンテナから部品を取り出し、組立順に並べる台車へ仕分けます。非定型の物を扱う部分だけを担当します。
搬送機器が運ぶ
台車は定められた集積地点へ移され、自動牽引車またはスマート搬送ロボットが組立ラインへ運びます。
作業者へ供給する
組立工程で、必要な順序どおりに作業者へ渡されます。定型的な長距離搬送は搬送ロボットの担当です。
非定型の物を扱う部分だけがヒューマノイドで、そこから先の定型的な長距離搬送は搬送ロボットが担っています。掴む機械と運ぶ機械が、それぞれの得意な区間を受け持つ形です。
5-2. GXOの倉庫
物流大手GXOの拠点では、さらに単純な分担になっています。ヒューマノイドの役割は公式に「搬送ロボットから箱を受け取り、コンベアに載せる」と説明されており、2025年11月時点で累計10万箱を超えたと発表されました。
搬送ロボットは箱を運べるけれど降ろせない。コンベアは運べるけれど受け取りに行けない。その隙間だけを埋めています。
5-3. 4つを束ねるソフトウェアも要る
4つの機械から1つを選ぶ、という発想には抜けがあります。それらをまとめて動かすソフトウェアがないと、現場には入りません。
冒頭で触れた東京電力グループの倉庫では、アームロボットと17台の無人搬送車を1つのプラットフォームが一括制御しています。Agility Roboticsはヒューマノイドの群管理基盤を提供し、稼働率・処理量・平均故障間隔を可視化したうえで、倉庫管理システムとの連携を業界標準の接続方式で提供すると説明しています。Amazonは100万台を超えるロボットの群制御に生成AIの基盤モデルを使い、移動時間を10%改善したと公表しました。
主要各社が同じ構造を持っているという事実が、この層の重要性を物語っています。ロボット本体の性能を比べる前に、既存の倉庫管理システムや生産管理システムとどう接続するのかを確認したほうがよいでしょう。
6. 選定でつまずかないための3つの確認
ベンダーが5年後に存在するか
撤退しても業務が止まらない設計にしておくこと。技術の話ではなく、契約と運用設計の話です。月額契約であればその点は有利に働きます。
「柵が要らない」を鵜呑みにしない
柵を省略するにはリスクアセスメントの実施と記録が必要です。教示や検査に従事する人には特別教育も要ります。この手間を工数として見積もりに入れておくこと。
回収年数は自社で計算する
対象工程の人数と年間の企業負担から始めて、システム一式の総額(本体価格の3倍前後)と、公的実証で見られた4〜5年という水準を突き合わせます。
1つ目について、この業界は淘汰が進んでいることを具体的に押さえておく価値があります。Shopifyが2019年に4億5,000万ドルで買収した倉庫ロボット企業は、2023年に1,270万ドルでOcadoへ売却されました。差額は4億3,730万ドルです。Zebraが2億9,000万ドルで買収したロボット企業についても、2025年12月の提出書類で戦略的選択肢の検討、つまり売却の可能性が表明されています。Amazonでさえ例外ではなく、2025年10月に発表した多腕ロボットの計画は、半年経たない2026年2月に中止されました。同社は基盤技術を他の計画に引き継ぐとコメントしています。
7. 導入済みの現場は、まだ少ない
最後に、この4つがどれだけ現場に入っているのかを確認しておきます。
国際ロボット連盟の統計によれば、2024年に世界で設置された産業用ロボットは約54.2万台、稼働台数は466万台に達しています。日本は設置44,500台、稼働450,500台でいずれも世界2位、従業員1万人あたりのロボット密度は446台で世界4位です。
一方で、日本国内の投資はむしろ足踏みしています。日本ロボット工業会の統計では、2025年の受注額は1兆456億円と25.7%増えましたが、国内向けの出荷は2,041億円で10.8%の減少でした。国際ロボット連盟の統計でも日本の年間設置台数は前年比4%減になっています。
倉庫の自動化に至っては、さらに手つかずです。調査会社のInteract Analysisは、2030年の時点でも受注処理・ピッキング用のAMRを1台でも導入している倉庫は全体の13%にとどまると見ています。世界で出荷されるフォークリフトのうち自動化されているものは3%だとしています。
これらの数字は、裏返せばまだ大半の現場が手つかずだということを意味します。協働ロボットは産業用ロボット全体の1割程度(2023年時点で10.5%)、ヒューマノイドに至っては数えられる段階にすらありません。選択肢が4つに増えた一方で、どれも入っていない現場のほうが圧倒的に多い。先行の余地は、まだ十分に残っています。
【注釈】
(注1)本記事の内容は2026年9月時点で確認できた公開情報に基づきます。メーカーの公式仕様、公的統計、業界団体の統計、事業者の公表事例、報道を区別して記載しました。
(注2)製造業の1人あたり年間企業負担は、毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上)と就労条件総合調査(常用労働者30人以上の企業/2019年度実績)を掛け合わせた本記事の試算であり、公表値ではありません。母集団と調査年が異なるため、桁を掴むための目安として扱ってください。
(注3)専用機の標準的なリードタイムと品種切替の費用・時間、および導入企業自身が実測した投資回収期間については、公表資料を確認できませんでした。
【参考ソース:ロボットの仕様】
- Universal Robots「UR10e テクニカルシート」(可搬12.5kg/リーチ1,300mm/繰り返し精度±0.05mm/設置面Ø190mm)universal-robots.com(UR10eデータシート)
- Mobile Industrial Robots「MiR250 仕様」(積載250kg/2.0m/s/満載13時間/勾配±5%/段差20mmまで/IP21/位置決め精度)mobile-industrial-robots.com(MiR250仕様)
- OMRON Robotics「Mobile Manipulator」(完全統合型モバイルマニピュレータを標準製品として提供していない旨の記載)robotics.omron.com(Mobile Manipulator)
- Agility Robotics「Solutions」(可搬35ポンド/稼働4時間/既存施設での運用)agilityrobotics.com/solutions
- ファナック CRXシリーズ 仕様・レンタル料金(オリックス・レンテック)orixrentec.jp(CRXシリーズ)
【参考ソース:費用】
- 安長電機「ロボット導入の予算」(総額1,500万円の内訳。本体27%/システム構築費40%)yasnaga.co.jp(予算の内訳)
- robot digest「ロボット導入コスト」(980万円の内訳、実証事業の回収年数4.6年・5.2年、大型事例2億円)robot-digest.com(導入コスト)
- サンビット「ロボット導入費用」(980万円/4,650万円の事例)sunbit.co.jp(導入費用)
- RG Group(MiR250 US$64,790 の正規代理店掲載価格)rg-group.com(MiR250価格)
- Logic Control(MiR1350 US$99,760/群管理ソフト US$23,000/充電器 US$13,380)logic-control.com(周辺費用)
- LNEWS「ラピュタロボティクス 重量検品機能付きPA-AMR」(月額12万円/台、重量検品+3万円)lnews.jp(PA-AMRの月額)
- パーツフィーダ実践情報「パーツフィーダの価格」(振動体5.4万円〜、ボウル・シュート製作が価格を左右)partsfeeder-practice.com(価格)
- ロボプラス「ロボットと専用機の違い」roboplus.co.jp(ロボットと専用機)
【参考ソース:人件費・市場統計】
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025年分結果確報」(製造業 現金給与総額430,282円/一般労働者472,927円)mhlw.go.jp(毎月勤労統計)
- 厚生労働省「就労条件総合調査」(製造業の労働費用総額476,149円/うち現金給与384,593円=80.8%)mhlw.go.jp(就労条件総合調査)
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(全国加重平均1,177円/+56円/発効は2026年10月1日〜12月2日)mhlw.go.jp(最低賃金の答申)
- IFR「Global Robot Demand in Factories Doubles Over 10 Years」(2024年 世界設置約54.2万台/稼働466万台)ifr.org(世界の設置台数)
- IFR「ロボット密度」日本語プレスリリース(日本446台/万人・世界4位)ifr.org(ロボット密度)
- IFR「Collaborative Robots – How Robots Work alongside Humans」(2023年 協働ロボットは設置台数の10.5%)ifr.org(協働ロボットの比率)
- 日本ロボット工業会「2025年 ロボット統計」(受注1兆456億円/国内出荷2,041億円・前年比-10.8%)jara.jp(ロボット統計)
- Interact Analysis「Macro-economic factors cause slowdown in global mobile robot market」(2030年でも受注処理用AMRを導入した倉庫は13%)interactanalysis.com(市場見通し)
【参考ソース:安全規格】
- ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会「協働ロボットの安全解説書」(安衛則150条の4、基発1224第2号、特別教育)jmfrri.gr.jp(安全解説書PDF)
- A3「Updated ISO 10218 FAQ」(ISO/TS 15066を統合、「協働アプリケーション」への用語変更)automate.org(ISO 10218 FAQ)
- ISO 10218-2:2025iso.org/standard/73934.html
【参考ソース:組み合わせ運用・事例】
- ロボスタ「東電物流 × Mujin」(アームロボットと17台のAGVを一括制御、ピッキング4人→1人、ケース品取扱量比で90%を自動化)robotstart.info(東電物流の事例)
- BMW Group PressClub「Figure 03 project in Spartanburg」(コンテナ→仕分け→シーケンシング台車→自動牽引車・搬送ロボット→組立)press.bmwgroup.com(T0458778EN)
- GXO Investor Relations「GXO Signs Industry-First Multi-Year Agreement with Agility Robotics」(搬送ロボットから箱を受け取りコンベアへ)investors.gxo.com(IRリリース)
- Agility Robotics「Digit Moves Over 100,000 Totes」agilityrobotics.com(100k totes)
- Agility Robotics「Agility Arc」(稼働率・処理量・平均故障間隔の可視化、WMS/WES/MES連携)agilityrobotics.com(Agility Arc)
- About Amazon「Amazon’s one millionth robot」(100万台超・300拠点超、基盤モデルで移動時間10%改善)aboutamazon.com(100万台目のロボット)
- ラピュタロボティクス「花王 関東物流拠点にPA-AMR 65台」prtimes.jp(花王への導入)
- The Robot Report「RightHand Robotics RightPick 3」(最大1,200ピック/時、ピック精度99%超、対象は2kg以下)therobotreport.com(RightPick 3)
- Mujin「デパレタイズソリューション」(単一荷姿1,000ピック/時、混載600ピック/時)mujin.co.jp(デパレタイズ)
- The Robot Report「Shopify suffers huge loss on 6 River Systems sale」(4億5,000万ドル→1,270万ドル)therobotreport.com(売却の経緯)
- Modern Materials Handling「Zebra Technologies exploring strategic options for its robotics automation business」mmh.com(Zebraの検討)
- TechCrunch「Amazon halts Blue Jay robotics project after less than six months」techcrunch.com(計画の中止)
弊社では、複数の自動化手段を横並びで比較する評価軸の設計から、対象工程の人件費にもとづく投資枠の算定、投資対効果の試算、そしてベンダー選定と契約条件の検討までを支援しております。自動化の失敗は、機械の性能ではなく工程と手段の組み合わせを誤ることから生じます。数字の出どころを切り分けたうえで、稟議に載せられる形の投資判断を伴走支援いたします。
コンサルティングや研修、取材等のご依頼は以下よりお問い合わせください。
https://catalys-inc.com/contact
連載:フィジカルAI(全5回)
- 第1回:ヒューマノイドは、もう働き始めている
- 第2回:ヒューマノイドに任せられる作業、任せられない作業
- 第3回:ヒューマノイドと他ロボットの使い分け
- 第4回:ヒューマノイドに柵は要るのか
- 第5回:ヒューマノイドの投資対効果



