コルチゾールマネジメント ~次世代の人的資本経営~③
“マウントを取りたい瞬間”に覚えるあの感覚の正体
SNSを使っていると、ある奇妙な瞬間に出会うことがある。
インスタで旅行写真を見かけたとき、
友人が昇進したニュースを知ったとき、
誰かのキラキラした生活が流れてきたとき。
自分も何か“映える投稿をしたくなる”。
あるいは、人より優れているところを示したくなる。
不思議なことに、普段はそんなことを考えない人でさえ、SNSでは無意識のうちに「比較モード」に入りやすい。
誰かが幸せそうに見えると、なぜか焦りを感じる。
自分より優位に見える相手を見ると、ざわざわする。
逆に、自分が優位になれる要素があると、ほっとする。
この反応に、罪悪感や劣等感を抱く人は多い。
「また比較してしまった」「人の幸せを素直に喜べない自分が嫌だ」と自己嫌悪する人も少なくない。
だが、これはあなたの性格の問題ではない。
努力や意思とは無関係である。
あなたがマウントを取りたくなるのは、脳が“そう設計されている”からであり、
極めて生物学的・合理的な反応なのだ。
ヒエラルキーの上に立つとセロトニンが出る——脳の“優位性報酬回路”
人間の脳が“優位に立つこと”を好む理由は、動物としての進化の過程にある。
霊長類、とくに人間に近いサルやチンパンジーを観察すると、
群れの内部に明確なヒエラルキー(順位)が存在することがわかる。
群れの上位に位置する個体は、餌を得やすく、仲間に守られ、繁殖機会も多く、
結果的に生存率が高くなる。
逆に、順位が低い個体は、餌も安全も繁殖も不利になる。
ここで重要なのは、
ヒエラルキーの上位に立つとセロトニンが分泌されるという点だ。
セロトニンは“安定と幸福”を生む神経伝達物質であり、
人間の精神の安定性に大きく寄与する物質である。
その分泌が増えることで、落ち着き、安心感、自尊心の高さ、
穏やかな気分が得られる。
つまり進化の過程で、脳はこう学習した。
「優位に立つこと=安全で快適で生存に有利」
「優位に立つとセロトニンが出る=気持ちが良い」
この仕組みが、現代にもそのまま残っている。
ちなみに話はそれるが、AIや技術革新で、人間が仕事をしなくても生活できる世の中になっても、周囲の人よりも優位に立ちたいという欲求は消え去ることがない。そのため、皆が平等な社会など、訪れることはないと、私は考えている。
動物としての“優位性の快感”——脳は比較せずにいられない
人間が生きている環境は大きく変わったが、脳の仕組みは変わっていない。
狩猟採集時代には、群れの中の位置づけが生存に直結したため、
脳は「自分が群れのどの位置にいるか」を常に計測しようとする。
その名残が、現代では以下の行動として現れる。
- 他人と自分を比較する
- 「優れているポイント」を探してしまう
- 劣っている人を見て安心する
- いいね数やフォロワー数を気にする
- 承認や賞賛への強烈な欲求を持つ
これらは、あなたの意思とは無関係であり、脳の自動反応である。
特に現代では、SNSという人工的な比較空間が用意されているため、
脳は常に“順位を測定させられている”状態になっている。
インスタ、X(旧Twitter)、TikTok、YouTube、Linkedin……
これらはすべて「序列を可視化するプラットフォーム」だ。
脳が勝手に優越感や劣等感を感じるのは当然であり、
むしろそれ以外の反応をする方が進化の観点では不自然なのである。

インスタ女子の“マウント投稿”の正体
——脳科学で見るSNS文化
一般に揶揄される“インスタ女子のマウント投稿”も、
脳科学的には非常に理解しやすい行動である。
- 旅行写真
- 高級レストラン
- 美容医療
- ブランド品
- パートナーのスペック
- 仕事の成功
これらはすべて、脳が「優位性の信号」と認識しやすい対象である。
投稿する側は、自分の生活を誇示したいという意図だけではなく、
セロトニンが出る“快感”を無意識に求めているのだ。
脳は快感を学習し、「再現したい」と感じるようにできている。
いいねが増えるとドーパミンが出る。
優位性を感じるとセロトニンが出る。
フォロワーが増えると自己効力感が上がる。
ここに悪意はない。
ただ、脳が“優位性の報酬”を求めているだけなのだ。
したがって、SNS文化は決して「現代特有の病」ではなく、
脳の進化的本能が、インターネットによって増幅されたものである。
企業や組織で起きる「比較・競争のセロトニン依存」
ここまでの話を、マネジメントの視点で考えてみる。
多くの企業は、至るところに序列を作る。
- 人事評価
- フォースランク(A評価・B評価など)
- ノルマ
- KPI
- 結果主義の賞与制度
こうした仕組みによって、従業員は常に“比較”され、
“評価”され、“優劣”を意識せざるを得ない。
順位が上がればセロトニンが出る。
評価が下がればコルチゾールが出る。
つまり、企業は無自覚のうちに、脳のヒエラルキー反応に依存したマネジメントを行っているケースが多い。しかしここには大きな落とし穴がある。
セロトニンは確かに“優位性”でも出るが、
それは “外部比較に依存した脆い幸福” に過ぎない。
外側からの刺激がなくなればすぐに崩れ、
やがては強いストレスと群れへの不安を招く。
企業が比較・競争だけを強める組織文化をつくると、
従業員は慢性的なストレスを抱え、
コルチゾールが高まり、
長期的なパフォーマンスはむしろ低下する。
“競争によってしか盛り上がれない組織”は、
脳科学的には非常に危うい構造である。
真の幸福は「内発的なセロトニン」でつくられる
では、どのようなセロトニンが望ましいのか。
答えは明確である。
比較によるセロトニンではなく、
自分自身の成長や充足から生まれる“内発的セロトニン”だ。
これは、他者より優れているかどうかではなく、
- 昨日の自分より成長した
- 仲間と助け合えた
- 自分の価値を感じられた
- 意味のある貢献ができた
- 誰かに感謝された
こうした“内側から湧き上がる安心感と充足”が、生み出すセロトニンである。
このセロトニンは、比較を必要としない。
そして、非常に持続的で、精神を安定させ、幸福度を上げ、コルチゾールを抑える。
弊社、カタリスが大事にしているのは“他者を押さえつけることで得るセロトニン”ではなく、“自分とチームの成長から自然と生まれるセロトニン”である。
これは脳科学的にも、組織論としても、非常に合理的だ。
まとめ:あなたがSNSで比較してしまうのは、あなたのせいではない
SNSでマウントを取りたくなる気持ちが生まれるのは、
あなたの性格が悪いからではない。
承認欲求が強いからでもない。
誰かを見下したいと思っているわけでもない。
それは脳が、
“比較によって安心と優位性を確かめようとする生存回路”
を持っているからだ。
しかし私たちは、
その本能を理解しつつ、アップデートすることができる。
- 外発的ではなく、内発的なセロトニンに依存する
- 比較ではなく、成長と貢献で満たされる
- 他者との上下ではなく、自分の内側で幸福が循環する
こうした生き方は、SNS時代において必須であり、
現代の人間関係の在り方を大きく変えていく。
脳の仕組みを理解すれば、SNSに振り回されず、
優位性の競争に依存しない、深く満たされた人生が手に入る。
弊社ではコルチゾールマネジメント、および次世代の人的資本経営、
脳最適化経営のコンサルティング支援を行っています。
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