前回の記事では、「差別化」の二つの種類、「種類の違い」と「程度の違い」について紹介しました。
競争優位を構築する ~2つのタイプの差別化競争優位を生み出す「違い」はざっくり言えば、種類の違い (ポジションの違い)と程度の違い (組織能力の違い)に分けられます。株式会社カタリス
一方で、差別化が実現できたとしても、それが他社にすぐ真似されるようでは持続可能な競争優位性にはなりません。
この記事では、組織能力の模倣困難性を実現する3つの要素を紹介し、今後の競争力強化の一助にしていただければと思います。
模倣の2つの形態
「直接的複製(Direct Duplication)」と
「代替(Substitution)」
模倣には「直接的複製(Direct Duplication)」と「代替(Substitution)」の二つの形態があります。
「直接的複製(Direct Duplication)」は、模倣する企業が、競争優位に立つ企業が保有する組織能力をそのまま模倣しようとするケースです。
例えば、ある企業が高度な研究開発能力やマーケティング能力によって競争優位に立っている場合、他社は同じレベルの能力や知識を自社で構築することで、同じく競争優位を構築することができます。
しかし、直接的な模倣はコストが高くついてしまう場合があります。
もし、模倣コストが資源の初期獲得コストよりも大幅に高い場合、模倣されにくい組織能力といえます。
「代替(Substitution)」は、模倣する企業が競争優位性を持つ企業の経営資源を、代替手段をもって同等の効果を発現させようとすることです。
例えば、ある企業が人的コミュニケーションスキルを活かした競争優位性を持っていたとして、他社はITツールによってそのスキルを代替しようとするかもしれません。
これらの経営資源が同等の効果を発揮するのであれば、それらは基本的に代替品と見なせます。
しかし、代替品が存在しない、もしくは代替品の獲得コストが元の資源の獲得コストよりも高い場合、模倣されにくい組織能力といえます。
模倣困難性の実現する3つの要素
組織能力に対する模倣困難性を実現する要素は3つあります。
「独自の歴史的条件(Unique historical conditions)」
「因果関係不明性(Causal ambiguity)」
「社会的複雑性(Social complexity)」
「独自の歴史的条件(Unique historical conditions)」
企業が非常に低いコストで特定の組織能力の採取や開発を行うことは、歴史的要素によるものが多いです。
・時間圧縮の不経済(Time compression diseconomies)
企業が特定の時間や場所に存在したことが、その資源の獲得や開発のための組織能力に影響を与えている場合、同種の資源を持たない他企業が同じような資源を獲得しようとする際には、それ相応のコストが発生します。
・経路依存性(Path dependence)
その企業が以前経験したイベントが、その後のイベントに大きな影響を与える場合、そのプロセスには経路依存性があるといいます。
競争優位が形成されていくプロセスにおいて、経路依存性が意味するのは、企業が現時点で競争力獲得できるのはそれ以前の段階で獲得したり開発したりした経営資源のおかげだということです。
「因果関係不明性(Causal ambiguity)」
模倣しようとする企業にとって、模倣対象の企業が保有する組織能力とその競争優位との関係がよく理解できない場合があります。
すなわち、その企業の競争優位との因果関係が不明なため、他企業は模倣しようにも何を模倣してよいのか曖昧で分からないことがあります。
この因果関係が理解できないのは、以下のようなケースが当てはまります。
① 企業が競争優位を生み出している組織能力やケイパビリティが、企業の運営にとって当然過ぎて気づかないケース
② 特定の組織能力やケイパビリティが単独で競争優位をもたらしているのか、複数の要素が組み合わさっているのかを正確に評価できないケース
③ 競争優位は単一の組織能力によってもたらされるわけではなく、多数の要素が一体となって形成されるケース
「社会的複雑性(Social complexity)」
企業の組織能力やケイパビリティは、社会的な現象であり、組織としての管理やコントロール能力の限界を超えています。
これらの組織能力が社会的に複雑だと、他企業は模倣するのが困難になります。
企業文化や評判など、高い社会的複雑性を有する組織能力の模倣は、それらを生み出すのに必要なエンジニアリングが大抵の企業のリソースを超えているか、もしくは自然発生的に醸成されるほうが安価であることが多いからです。
以上、本記事では模倣困難性を実現する3つの要素について紹介しました。
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