ダイバーシティ経営とは ~性別や国籍の多様化では不十分
ダイバーシティ経営とは
ダイバーシティ経営という言葉が注目されています。
経済産業省では、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義しています。
一方で、多くの企業では、ダイバーシティ経営の理解や、その打ち手は不十分であるところが多いです。
例えば、昨今の流れを受け「女性比率を増やせ」、「外国人比率を増やせ」、「高年齢者雇用を始めろ」という号令がかかっている例も少なくありません。
それ自体は、人的リソースの「量」を拡充させるという観点、より幅広い人に雇用の門戸を開くという観点からは意味がありますが、本質的には、ダイバーシティ経営の意味合いが理解出来ていないと言わざるを得ません。
経済産業省の定義に沿えば、それらの打ち手が「イノベーションを生み出し、価値創造」への繋がりが薄いということです。
「人口統計学的多様性」と「認知的多様性」
ダイバーシティには、大きく2つの種類があります。
「人口統計学的多様性」:性別、人種、年齢、信仰などの幅広さ
「認知的多様性」:ものの見方や考え方、経験、知識などの幅広さ
ほとんどの企業では、「人口統計学的多様性」を高めようとはしているものの「認知的多様性」には意識が向けられていません。
イノベーションを生み出すには「認知的多様性」が必要
「視点があるから盲点がある」。「多様性の科学」の著者マシューサイドはこう言っています。
我々ほとんど人間は、自分自身のものの見方や考え方の癖には無自覚であり、一定の枠組みで物事を捉えてしまっています。
本来、違う視点で物事をとらえることで、違った発見がある可能性があるにもの関わらず、それに気づかないことが大半です。
また、同じような人の集まりは盲点も共通しがちであり、さらに悪いことに間違った判断に対して鏡に映したように同調し合い、その解が正しいと信じ込んでしまいます。これは「ミラーリング」と呼ばれます。
そういった点からも「認知的多様性」を担保し、様々な観点から意見を引き出すことで、盲点をなくしていくことができます。
また、イノベーションは「知と知の組み合せ」であるともいわれる通り、たとえば、自社の既存の技術と、別技術の既存の活用方法を組み合わせ、新しい商品やサービスを生み出していくことが可能です。
そのような観点でも、「認知的多様性」を高めていくことで、知と知の組み合わせが促進され、イノベーションに繋がりやすくなります。
(参考:人口統計学的多様性が高いと、育ってきた背景や環境などが異なり、考え方も異なりやすくなることため、認知的多様性も高くなる傾向もあります。その点では人口統計学的多様性を高めることには一定の意味はあると考えられます。)
上記で紹介したとおり、単に「女性比率を高める」「外国人比率を高める」等の人口統計学的多様性に留まらず、バックグラウンドの多様性や、知見や経験の多様性も考慮し、採用やチーム組成していくことが、本来的な意味でのダイバーシティ経営に繋がるといえます。
「船頭多くして船山に上る」には注意
一方で、多様な知見や経験、考え方を持った人を寄せ集めた場合、「船頭多くして船山に上る」や「委員会が馬をデザインするとラクダになる」と言われるように見当違いの方向に物事が進んでいくことも懸念される人もいらっしゃると思います。
その懸念は正しく、ただ単にいろんな人を寄せ集めただけでは不十分であり、そのマネジメントや活用方法には注意が必要です。
例えば、単なる予測ではなく、問題解決の際にはそれらのアイデアの平均値をとるのではなく、議論したうえで、一部のアイデアは切り捨てなければなりません。
そうしなければ、結局、いろんな人のいろんな意見を取ることで抽象度が上がり、「何も言っていない」または「一般論に近い」アイデアになってしまいます。
ただし、発想そのものが多く出ることはよいことで、異なる角度から様々なアイデアを出されることによって、アイデアの幅が広がる=問題解決やイノベーションにつながる可能性が高まるといえます。
会議のリーダーはそれらを意識したうえで、アイデアの発散や収束を行っていく必要があります。
支配的なリーダーは多様性を殺す
インド人のIT起業家の浴びナッシュ・コーシックは、「支配的なリーダーは世界を支配している。部下のデータを却下し、自分の意見を押し付け、物事を一番わかっているのは自分だと信じて疑わない。その存在のせいで意見は出なくなる」と言っています。
これと同様に、圧倒的な権威や経験を持っている人がその場にいるのも同じような影響があり、「わざわざ自分が言わなくてもあの人なら知っているだろう」という心理が働きます。
そのため、せっかく様々な人を集めても、「活発に意見が出なくなる」、または、「権威を持った人に忖度した意見しか言えなくなり」、集合知が損なわれてしまいます。
これはそもそも、チームが組成された時点で変えられない問題となりますので、チーム組成のタイミングで留意すべきポイントとなりますし、会議に参加していない方が、そのような状況に陥っていないか、適宜モニタリングすることも解決策の一つとなります。
以上、本記事では、ダイバーシティ経営について、その概要とポイントについて紹介しました。
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